大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)1156号 判決

(ホ)の点について。さて、以上(イ)から(ニ)までの点に判示したところによれば、被控訴人大場および同宮川は、乙地を賃借して、同地上に登記した居宅を有し、その居宅の庭として使用するため、係争地を賃借し、現にみぎ目的に従つて係争地を使用しているものであつて、乙地と係争地とがそれぞれの意味合いをもつて、乙地上にある建物の利用の便益に供されていることが明らかである。しかしながら、被控訴人らの主張するように、係争地の賃借権が法律にいわゆる「建物所有の目的」に出たものであり、単に庭としての使用目的に止まるものでないとの点については、前挙示の証拠によつては、これを肯定できる事情を見出しがたく、他にこれを明示にも黙示にも認めしめるに足る証拠がない。してみれば、被控訴人らが係争地について主張する賃借権は、建物保護に関する法律第一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル土地ノ賃借権」のある場合に該当しない。また、乙地がたとい狭隘であつても、被控訴人宮川および同大場の居宅は、同地上にのみ存するのであるから、現況庭である係争地の賃借権に対抗力を与えなくても、乙地の賃借権の効力および同地上の建物の存続自体には影響がないこともちんろんであつて、同被控訴人らが係争地上に前記法律にいう登記した建物を有する場合にも当らない。ただ若し、係争地の賃借権に対抗力を否定するときは、それが現に乙地上の建物のためのほとんど唯一の庭であり、その採光および日照に資していることから係争地を失つた建物の居住上の便益は、相当程度失われ、延いてその交換価値にもかなり消長が現われるであろうことは、推察できないではない。同被控訴人らの主張する乙地と係争地との一体としての使用ということは、この意味において理解できないではない。しかし、所詮賃借権なるものは、法の特に定める場合のほかは、いわゆる対抗力のないものであつて、そのような事態の生じる場合、従来かかる対抗力のない賃借権によつて享受して来た利益が失われることのあるべきは、現行法制の当然予想するところとして、やむを得ないものとして甘受しなければならない。係争地を失うことにより乙地の利用および同地上の建物の居住上の便益等に生ずべき影響も、ひつきようみぎの範囲に属するものであろう。この程度以上に出でて、本件の場合に生ずべきみぎらの損失が償い難いものであるという特段の事情の存することについては、被控訴人らの主張立証がない。これを要するに、被控訴人大場および同宮川の主張する係争地の賃借権については、建物保護ニ関スル法律の規定が適用さるべきではなく、これを控訴人に対抗することができない。

(中西 兼築 稲田)

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